お正月の遊び、凧揚げの思い出

「凧あげしたことある?」。その日、クラスのみんなに聞いてみたんだ。そしたら、だれも凧揚げしたことないって言うんだ。「じゃあ、やってみようよ。凧あげ。おもしろぞ!」。ぼくの提案に賛成した3人が、放課後、大井川の堤防に集まった。日曜日におじいちゃんに教えてもらって作った凧。クラスの友だちといっしょに、あたりが夕暮れるまで凧を揚げて遊んだ。

ぼくの生まれた街、静岡県島田市は、市の真ん中を大井川という川が流れている。大井川は、川幅が1キロもあって、すごく広いんだ。それから、年がら年じゅう風が強い。パルプ工場の煙突の煙はいつでも横なぐり。島田は風の街だ。そのころ、ぼくはボーイスカウト島田第五団に所属していて、芭蕉の碑のある大井川公園や、大井川の河原の中の林でよくキャンプをした。「おい、仮面の忍者赤影見たか?白影が凧に乗って空から現れる…」。キャンプに凧をもってきた上級生が上手に凧を揚げながらぼくに言った。

「凧って気持ちよさそうだなぁ。凧になって大空を飛びたいなぁ」。それがぼくと凧の出合いだ。あれからもう何十年もの月日が流れた。お正月、大井川には今でも凧が空高く揚がっているのだろうか。

現代の子供たちに凧揚げの楽しさを

生まれた所を遠く離れて、大井川の凧あげを思い出したのは、地域の子供たちで、お正月に凧揚げ大会をやろうという話を息子の担任の先生から聞いたからだ。「凧あげ大会なのでルールを決めたいんです。妙案はないでしょうか」。凧あげ大会のルール。これは、大人が作って子どたちに押し付けるよりも、子供たちに考えさせよう。先生のリクエストにより、五年生のクラスにゲストとして参加した。名付けて「凧あげ大会プロジェクトチーム」。

その日、私は近所の100円ショップで3種類の凧を買って小学校に持って行った。まず、凧を揚げたことのない子供たちのために、凧あげの楽しさを体験してもらうためだ。それからもうひとつ。凧の構造について学んでもらう…そんなにたいそうなものでもないのだが、凧の骨組みや素材などを子供たちに見てもらうことにした。

実際に子供たちに凧をあげてもらうと、風が弱いのでなかなかうまく揚がらない。「いいかい。風上に向って走ってみな」。子供たちは一所懸命走る。そのうち凧は風に乗り、空高く舞い上がっていく。「凧って楽しいね」女の子の声が聞こえた。手づくりおもしろ凧入門

子供たちが決めた凧あげ大会のルール

子供たちと凧あげ大会のルールを考えてみた。面白い意見がたくさん出たので、ここに記すことにする。

●大会名 ○○小学校お正月凧あげ大会 ●ルール @男女3人ずつでチームを作る。チームには必ず1年生または2年生を一人以上入れる。チームの人数がそろわない場合は、先生に相談する。 A凧は自作とする。凧の作り方はチームで調べる。(家の人・図書館・インターネットなど) B材料は竹と紙と凧糸、のり、接着剤のみとする。 C凧の大きさは自由。 D凧の数は1チーム2つまで。 ●賞 「高く遠くに揚げたで賞」。大会当日、審査員の児童が決める。「おもしろい凧で賞」、「飛ばないで賞」、「グッドデザイン賞」、「目立つ凧で賞」は、大会前日、体育館に展示して全員で投票する。賞状は主催の児童会が制作する。「高く遠くに揚げたで賞」は、凧あげ名人として学校壁新聞に写真入りで載せる。

凧上げ大会は正月の第2土曜日に開催された。5年生が中心になって呼びかけ、総勢35チーム。子供たちの凧は風に乗り、空高く舞い上がった。遠いあの日、風吹きすさぶ大井川の夕暮れを思い出す。やっとあがった凧。子供たちの成長と将来の多幸を祈る。遠くで歓声が聞こえた。

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